ワークロードの特性評価およびネットワーク プランニング
本番環境への展開の前に、ユーザー体験に対する期待、ネットワーク帯域幅のニーズ、およびホスト プラットフォーム(物理または仮想デスクトップ)とAnyware Clientエンドポイント双方のパフォーマンスから、リモート デスクトップのワークロードを評価する必要があります。以下のセクションでは、ユーザー ロールおよび一般的なワークロードの簡単な分類を示します。この分類は、ユーザー期待値のガイドラインとして使用でき、帯域幅消費量の推定に役立ちます。
ユース ケースの分類
PCoIPテクノロジーは、以下のようなさまざまなユーザー ロールに適した幅広い機能を提供します。
- タスク ワーカー:タスク ワーカーは通常、コール センターまたはオンライン認証テストを行う企業など、画面で簡単なデータおよびテキスト入力などを行うアプリケーションを使用します。
- ナレッジ ワーカー: ナレッジ ワーカーは、エンタープライズレベルの生産性スイートやCD品質の対話型音声コミュニケーション ツールを使用します。時にはHDビデオを視聴し、一部の軽量3Dアプリケーションを保有する場合もあります。
- CADまたはクリエイティブ:グラフィックを多用する高品質コンテンツに関わる建築士、製図作成者、ビデオ編集者、ゲーム開発者、およびアニメーターなど、デザイナーやアーティスト系の人々が該当します。同様に、複雑なデータ セットから高解像度のビジュアル情報を抽出するためにコンピュート ファームおよびハイ パフォーマンス コンピューティング(HPC)プラットフォームを使用するサイエンティストやエンジニアもこのロールに属します。
- レビュー:配信ビデオの品質管理(QC)およびポスト プロダクション フィニッシングに携わるチームが該当します。画像のカクつきまたはアーティファクトといったビデオの不具合がほとんど許されない、色精度に優れたプロダクション グレードのコンテンツをレビューします。同様に、目に見える画像アーティファクトのない応答性に優れたシステムを利用する金融トレーダー、アナリスト、および一部の医療関係者もこのロールに属します。
タスク ワーカー | ナレッジ ワーカー | CADおよびクリエイティブ | レビュー | |
---|---|---|---|---|
データ/テキスト入力 | ✔ | ✔ | ✔ | ✔ |
アプリ単位の一般的なウィンドウ サイズ | 全画面テキスト | 画面の一部 | 最大で全画面 | 最大で全画面 |
オフィス製品およびウェブの使用 | ✔ | ✔ | ✔ | |
ビデオ再生 | 時折 | ✔ | ✔ | |
3Dアプリケーションの使用 | 少し | ✔ | ✔ | |
プロダクション品質コンテンツの再生 | ✔ |
帯域幅消費量の推定
ユーザー ロール別のネットワーク帯域幅の概算を以下の表に示します(ディスプレイ トポロジは1920×1080)。
ユーザー ロール別の帯域幅消費量
ユーザー ロール | PCoIPモード | 平均帯域幅 | ピーク帯域幅 |
---|---|---|---|
タスク ワーカー | 初期設定 | < 100 kbps | < 1 Mbps |
ナレッジ ワーカー | 初期設定 | < 1 Mbps | < 10 Mbps |
CADまたはクリエイティブ(30 fpsのワークロード) | PCoIP Ultra Auto-Offload(YUV 4:2:0のサンプル) | < 5 Mbps | < 50 Mbps |
CADまたはクリエイティブ(60 fpsのワークロード) | PCoIP Ultra Auto-Offload(YUV 4:2:0のサンプル) | < 10 Mbps | < 100 Mbps |
レビュー | PCoIP Ultra Auto-Offload(YUV 4:4:4 Q90のサンプル) | < 25 Mbps | < 250 Mbps |
注意事項
- ここに示す帯域幅の値は、あくまでも概算です。PCoIPの帯域幅は、プロトコル構成、ユーザー ロール、ワークフロー、およびコンテンツという特性によって異なります。ディスプレイの解像度が高くなれば、「PCoIP Ultraベンチマークの例」に示すように、ビデオまたはグラフィックス コンテンツの帯域幅要件は増加します。
- 本番環境への展開を進める前に、概念実証(PoC)を実行して、帯域幅ニーズを予測することをお勧めします。
グラフィックを多用するワークロードのピーク帯域幅の推定
グラフィックを多用するワークロードの場合、ビデオ再生などの高フレーム レート アクティビティで高画質を維持するために、ネットワーク管理者は、ネットワークの平均帯域幅およびピーク帯域幅を考慮する必要があります。使用可能なネットワーク帯域幅が十分でない場合、PCoIPは画質およびフレーム レートを自動調整します。
ピーク帯域幅の確認
PCoIPの初期設定モードまたはPCoIP Ultra CPU-Offloadモードを使用する場合、ピーク時の帯域幅ニーズは、一般に0.5~2.0 bpp(1ピクセルあたりのビット数)の圧縮比で推定できます。PCoIP GPU-OffloadまたはAuto-Offloadでクロマ サブサンプリング4:2:0を使用する場合、構成されている画質およびコンテンツの複雑さによりますが、ピーク帯域幅は0.1~1.0 bppの圧縮比で推定できます。細い線およびテクスチャのディテールといった細かい画面コンテンツを維持するために高画質設定(例:Q90)を使用するクリエイティブまたはレビューのケースでは、圧縮比3~4 bppをサポートするピーク帯域幅の割り当てが必要になることがあります。
平均帯域幅の確認
ユース ケースによりますが、ディスプレイを使用していないときのPCoIPの消費帯域幅が最小限であることを考慮すると、平均帯域幅は、一般にピーク時の帯域幅ニーズの10%未満です。共有ネットワークの帯域幅のプロビジョニングは、個々の接続のピーク値を厳密に合計した値ではなく、平均値の合計に経験的なピーク値を加えた値をベースにする必要があります。
画質に関する留意事項
PCoIPセッション変数に関するセクションに記載されているように、ピーク時および平均の帯域幅消費量は、セッションの帯域幅制限または初期設定以外の品質設定を使用して強制的に制限を加えることができます。たとえば、PCoIP Ultra Auto-Offloadの使用時にMaximum Initial Image QualityをQ80からQ70に調整すると、ビデオ再生中の帯域幅を約50%節約できる可能性があります。
キャパシティ プランニングのヒント
以下のセクションでは、ネットワーク容量を交渉する際に考慮すべき重要な帯域幅要件について説明します。
- PCoIPトラフィックに十分な帯域幅を割り当てるために、ユーザー ロールに適したユーザー体験のプロファイルを確認し、それに基づいてPCoIPセッション パラメーターを設定してください。Windowsアプリケーションを使用するナレッジ ワーカーについては、標準的なオフィス アプリケーション用に平均で150~250 kbpsを確保します。
- オーディオ入出力およびUSBトラフィック用の帯域幅の追加を検討してください。USBトラフィックを制限するには、Anyware Zero Clientの帯域幅制限パラメーターを構成してください。必要に応じて、PCoIPセッションのオーディオ帯域幅制限を構成します。
- 初期の画質設定を使用する場合、480 pのビデオ ウィンドウで同時視聴するユーザー1人につき1~2 Mbpsを、1080 pのビデオ ウィンドウで同時視聴するユーザー1人につき10~13 Mbpsを確保します。プロトコル モードおよび品質設定に基づく追加帯域幅の推定値については、「PCoIP Ultraのベンチマーク」を参照してください。
- ネットワーク帯域幅の分析では、ネットワーク容量の合計に関するガイドラインを順守してください(たとえば、ピーク帯域幅はリンク容量の理論値の80%未満にする必要があります)。
- PCoIPプロトコル トラフィックのバーストに備えて、十分な帯域幅ヘッドルームを確保してください。
- 最小限の帯域幅ヘッドルームとして、500 kbps~1 Mbpsを確保してください。実際に必要なピーク帯域幅は、ユーザーおよびアプリケーション(例:変化するピクセル数、圧縮のレベルおよび複雑さ、およびディスプレイのフレーム レート)によって異なります。
- Remote Workstation Cardユーザー用にピーク容量を十分に確保してください。ワークステーション アプリケーションの多くは、より大きなピーク帯域幅を必要とし、その帯域幅はユーザーおよびイメージング ワークロードによって異なります。また、リンクを共有しているユーザーの数によっても異なります。
- オーバー サブスクリプション分析(オプション)を使用すると、セッションごとにピーク帯域幅を利用できるという適度な期待を維持すると同時に、リンクのサイジングを効率的に行うことができます。
- 制限のある既知のネットワーク環境で運用する場合、最大PCoIPセッション帯域幅制限の構成を検討してください。Windowsデスクトップのエクスペリエンス設定の最適化、ディスプレイ解像度の下方修正、または接続ディスプレイ数の制限により、帯域幅をさらに節約できます。
- ハードウェア ビデオ エンコーダー(例:NVIDIA NVENCまたはmacOSハードウェア)をサポートする環境では、PCoIP Ultra GPU-Offloadモードにクロマ サブサンプリング4:2:0を構成すると、さらに帯域幅を節約できます。詳しくは、「PCoIP Ultraのセッション プランニング」を参照してください。